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低タンパク血症

 お腹の中にたまった水を腹水と言います。

腹水の原因は多岐に渡りますので、我々獣医師は、腹水を見つけたらなんとかそれを少量採取して検査を行い原因を探ります。

腹水が無色透明で細胞成分やタンパク質に乏しい場合、低タンパク血症の場合があります。

 低タンパク血症とは、血中タンパク質が異常に低い状態のことを言い、タンパクの原料の不足、タンパク合成障害、タンパクの喪失などに分類されます。 タンパク合成障害には肝硬変などが代表されます。

 お正月の救急外来で、他院にて「腹水がたまる病気」を1年間治療中のワンちゃんを診察しました。ステロイドという薬を3日に1回飲んでいるとのことでした。その日は嘔吐と下痢がひどいということでした。

 エコー(超音波)検査にて、腹水(赤丸:黒くうつっているので、比較的キレイな腹水です)と、小腸粘膜の肥厚および粘膜層の特徴的な高エコー縞状パターンと言われる白い縦縞(赤矢印)を認めました。また血液検査にて重度の低タンパく血症を認めたため、タンパク漏出性腸症(特にリンパ管拡張症)を疑いました。

腹水エコー

 厳密に確定診断をするには内視鏡で腸粘膜の一部を取って調べる検査も必要なのですが、既に他院でステロイドを投薬していることと、飼い主様が内視鏡は希望されなかったので、リンパ管拡張症疑いとして、治療を一から組み立て直しています。

 適切なステロイドの量と、必要であれば免疫抑制剤、また消化管内の過剰な細菌増殖を抑えるための抗生剤、そして徹底的な低脂肪食が必要です

 治療に良く反応する子は血中タンパク濃度が正常になり、薬も順調に減らすことができます。しかしこの病気は生涯にわたる治療が必要なため、なかなか薬を減らせない子は副作用なども考慮する必要があります。私は血中タンパク濃度が正常値まで上昇しなくても腹水や消化器症状などの臨床症状が改善されていればOKと考えていますので、それを維持する程度の薬用量を見極めて行きます。

 病気に対する研究が進んで、また検査機器や検査技術の進歩で、確実な診断が下せるようになって来ています。しかし根治できる病気ばかりではなく生涯にわたる治療が必要な子もすごく多いです。

なるべく動物たちの生活の質を維持しながら、また飼い主様の希望に沿った獣医療を提供できるように、相談しながら診療しています。

動物医療センター とよた犬と猫の病院

院長

北原 康大

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